沿革

日本小脳学会の歴史は、日本小脳研究会の発足に始まります。2010年5月に例年のように全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症(SCD・MSA)友の会の総会および医療相談会が行われました。そこで脳神経内科医や研究者に寄せられた要望は、何と言っても早く有効な治療法を開発してほしいという切実な叫びでした。そのような患者さんやご家族の思いに対して始まったのが小脳研究会でした。

個々の脳神経内科医や研究者は一生懸命に診療や研究に当たっており、多くの原因遺伝子が解明され着実に発症機序の研究は進歩しています。しかし、そのスピードは患者サイドから見ると遅々として進まずといった印象なのではないかと思います。実際、SCDやMSAに関わる脳神経内科医や研究者は、アルツハイマー病やパーキンソン病に比べれば遙かに少なく、また患者数が膨大な両疾患はもとより、患者数がSCD・MSAより遙かに少ない筋萎縮性側索硬化症に比べても、病態解明と治療法開発の研究が充分に進んでいるとは言い難いのが現実です。

一方、小脳の解剖学、生理学、薬理学など基礎的な理解は古くから非常に進んでおり、やはりわが国の研究者の貢献がとても大きいと思います。さらに、小脳を冒す疾患には、SCD・MSAの他にも血管障害、炎症、腫瘍、外傷、奇形など多くの疾患が含まれます。このような状況にあって、小脳ならびに小脳障害・小脳疾患の分子メカニズムと病態生理を解明し、SCD・MSAを含めた小脳障害・小脳疾患に対して真に有効な治療法を開発し克服するには、臨床医や基礎研究者を中心とし、産業界や行政をも含めて全ての関係者が緊密に協力して研究を進めることが必須です。

この目的のために、日本小脳研究会(Japanese Society of Cerebellum Research : JSCR)が設立され、広く小脳と小脳障害・小脳疾患に関心を持つ基礎研究者、臨床医、ならびに一般市民にも本研究会への参加を求めるとともに、2011年1月の厚生労働省の運動失調症に関する調査研究班の班会議の折に第一回の学術集会が開催されました。この時は同研究会の顧問でもある故伊藤正男先生と故金澤一郎先生に本研究会への期待を熱く語っていただきました。以降、毎年、当該研究班班会議に合わせて学術集会・総会が開催され、特に臨床医と基礎研究者さらに患者会の皆さんの連携・協力に貢献してきました。

このような中で、2018年12月1日-4日に第75回藤原セミナーが小脳と小脳疾患をテーマに世界の多くの研究者(海外23名国内30名)を招聘して開催されました。これは藤原科学財団が支援する藤原セミナーとしては初めて脳神経科学をテーマとしたもので、これを契機に若手の小脳研究者によって「小脳システム研究会」が設立され、活発に学術活動を開始いたしました。小脳研究会と小脳システム研究会との間でも相互交流が行われ、2020年2月15日、記念すべき第10回小脳研究会学術集会・総会と第2回小脳システム研究会シンポジウムとが合同開催されました。この時の小脳研究会の世話人会議では、目的を共有する小脳システム研究会と統合し、日本小脳学会として活動することが承認されました。臨床系には日本パーキンソン病・運動障害疾患学会があり、運動失調症も含まれますが、小脳は認知機能にも関係しており小脳とその疾患・障害を対象とする学会があることは、小脳疾患に苦しむ患者さんにとっても大変有益なことと思われます。

2021年3月12日の日本小脳学会の理事会にて審議の結果、定款、顧問、評議員候補、正会員候補、運営委員会、事務局で承認されました。翌日、2021年3月13日(土曜)には、日本小脳学会としては初めて、通算で第11回目の学術集会・総会がNCNPのコスモホールとオンラインのハイブリッド方式で開催されました。本会議は教育講演、特別講演、9件の一般演題、シンポジウム(4件の演題)が行われ、参加登録者数は257名と過去最大で、患者・家族会としては全国SCD・MSA友の会とcureDRPLAからもご参加ご挨拶をいただき大変盛会でした。小脳障害・小脳疾患を一日も早く克服すべく、今後のますますの発展目指します。

資料

日本小脳研究会の役員

顧問:伊藤正男、金澤一郎、篠田義一
発起人:佐々木秀直、祖父江元、辻 省次、西澤正豊、水澤英洋、狩野方伸、川人光男、北澤 茂、杉原 泉、三品昌美、和田圭司(事務局)
代表:水澤英洋

日本小脳研究会の過去の学術集会・総会のプログラム

タイトルをクリックすると、過去のプログラムをダウンロードしていただけます。

小脳システム研究会の役員

顧問:三苫博、山口和彦
発起人:石川太郎、石川享宏、志牟田美佐、本多武尊
代表:本多武尊

小脳システム研究会の過去のセミナーとシンポジウムのプログラム

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